うまみ(女)の記

連載:先天性の難病を持つムスメ②医師からの宣告

うまみ(女)の記
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うまみはNICUへ

出産後少しだけお腹に乗せてもらい、記念撮影を済ませると、うまみはすぐにNICUへ連れていかれた。
低出生体重児ということで、 色々検査をし、ある程度大きく育つまで保育器の中で過ごすことになるそうだ。

さみしい気持ちもあるものの、第一子うまもを出産したときの産後ボロボロの状態を経験しているだけに、少なからず眠れる・休めるという事がありがたかった。

少し寝て、体力が回復したら会いに行こう…。
それまで、少し休ませて…。

医師から呼ばれる

少し休んだ私の元へ、看護師さんがやってきた。

「お母さん、明日、ご主人は来られる?先生から話があるから…」

と、いうので、早速主人に来てもらうことにした。
この時、私は全く何も疑っていなかった。
だって、NICUに赤ちゃんがいるっていう時点で、今後の退院までの事とか、いろいろ話があるのは当たり前の事だと思っていたから。

医師から「難病」と宣告される

さて、出産翌日、夫は時間より前に病室にやってきた。
それから一緒にNICUへ行った。
NICUは、テレビで見たイメージ通りで、広い部屋にたくさんの小さな赤ちゃんが保育器に入れられている。
みんな、脈拍を計る線や、酸素の値を計る線など、たくさんの線がつけられている。
黄疸治療で、青い光を浴びている赤ちゃんもいた。
室内は暑いぐらいの温度で、看護師たちは、皆エプロンに手袋を付け、いかにも衛生的な装いだ。

私は産後当日にNICUに入っていたものの、なかなかこの環境に慣れない。

深刻そうな表情で我が子を見つめる両親の姿や、涙ぐんでいるお母さん、颯爽と授乳に行くお母さん、嬉しそうにおばあちゃんと一緒に来ているお母さん…いろいろだ。

うまみのところへ行くと、昨日と同じうつ伏せの状態で、たくさんの線を付けられ保育器の中に入っている。
触るときは、保育器に開けられた穴に両手を入れる。

近いのに、遠く感じる。

すると、医師がやってきた。

「ああ、お父さん、お母さん、ちょっとこちらで…」

医師は私たち夫婦を、別の部屋へ通してくれたが、明らかに様子がおかしい。

あれ?普通こんな個室にわざわざ?

不思議に思いながらも、ソファに腰かけた。すると早速医師が口を開いた…

「あの…うまみちゃんの事なんですけど、 実はですね、 口蓋裂があるんですよ。」

え!?

何を言っているのか、全くわからなかった。
そもそも、「口蓋裂」という言葉自体初めて知ったので、理解すらできなかった。
すると、医師が丁寧に、図を書いて説明してくれた。

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

沈黙が流れた。
私も、夫も茫然とした。
すると、医師がさらに話を続けた。

「通常、口蓋裂というのは口唇裂といって唇まで裂けている子が多いんですが、うまみちゃんの場合、口蓋裂だけなんです。だから見た目にはわからない。私も昨日検査をしている時に気が付いたんですが…。
ただ、口蓋裂が結構重度でして…おそらく授乳は厳しいと思いますので、しばらくは、チューブから栄養を入れることになると思います。
あと、顎が小さいんですよ。小下顎症というんですが。そして舌根沈下が見られます。今の状態だと、舌が喉の奥に落ち込んで気道を塞いでしまうので呼吸が難しいんですよ。
度々チアノーゼ (血液の中の酸素が欠乏して、皮膚や粘膜が青黒くなること )も見られるので、危険な状態です。
この病気は3万人に1人の確率で発生するといわれている難病です 。(病名は伏せさせてください)
今のところは色々とこちらでもやってみますが、もし改善しないようであれば、手術などもありますので今後また相談させてください。」

・・・・・・・・・・・・・・・・。

ショックというか、一気に知らない言葉がバーッと入ってきて、理解が追い付かない状態で…
抜け殻のような状態になってしまい、しばらく何も言えなかった。

ハッとして、咄嗟に出た言葉が

「先生・・・・これって、治る病気でしょうか?」

精一杯、声を振り絞って尋ねた。

「・・・・・・・・・・・。
難病なので、今のところ、これといった治療法はありません
ただ、成長と共に少しずつですが、症状は改善していきます。
2歳ごろになれば、口蓋裂の手術も行いますので、その後は回復していくと考えています。
この病気は複合的な疾患ですので総合的な治療は、高校生ぐらいまでは続けていく必要があります。
また、この病気は途中で合併症が発見されるケースも多いので、今の段階では…」

「・・・・・・・・・・・。」

衝撃だった。

もう、それ以上聞くことはできず、何を聞いていいのかもわからず…
先生も、こちらの状況を察したのか、

「お母さん、大丈夫ですよ。任せてください。
また、質問があったらいつでも聞いてください。時間をとるようにしますから。」

と言ってくれた。

どん底から、立ち上がる

その日、病室に戻り、夫とも何を話せばいいのかわからなかった。
夫も無言で、考え込む様子だった。

夫が帰った後、一人で泣いた。

ただ、ただ、泣いた。ひたすら。
布団の中で、声を殺して、泣いた。

病気のことを理解して泣いたのではなく、ただただ、不安で。
どうしようもなくて、無心で泣いた。

そして、少し冷静さを取り戻したとき、ふっと思った。

「私、もう泣かない。泣いてる場合じゃない。もっと理解しないと。 私がこんなでどうすんだ。」

母は強し、とはよくいったもんだ。
今でも不思議です。ひとしきり泣いたら、吹っ切れたのが。

そこからは怒涛の検索魔です。
職業柄、検索能力は高い方だと思っているので、それはもう高速で読み進めます。
ノートに要点を書きだしていく。
あっという間に、検索ページは閲覧済みの紫色のリンクに染まっていった。
1ページ目、2ページ目、3ページ目・・・

ほぼ、徹夜状態で調べまくった。

そして、翌日には医師へ確認すべき事項がまとめられた。

私の中で、いろんなバラバラに入ってきていた情報が一つに繋がったのだ。

「もっと、早くに産んであげられたら、うまみは・・・」

そう、出産は年齢があがるにつれて、赤ちゃんの障害のリスクが高まるのだ。
私は、今回の出産前、年齢のこともあり、クアトロテストを受けていた。しかし結果が思わしくなく、羊水検査まで行っていた。
にも関わらず、今回のような結果になったのだ。
もちろん、 羊水検査で診断できるのは染色体や遺伝子など、特定の異常に限られており、全ての異常が発見できる訳ではないことは知っている。
出来る検査は全て行ったつもりだった。
もはや、自分の年齢を責めるより他なかったのだ・・・。

原因は医師にも特定は難しいと言われたので、追求しても仕方がない事だと思ったが、原因が不明だという事がどうしても納得いかず、連日調べた。原因がわからないことに対する不安が大きかったのだと思う。

当時の私に言ってあげたい。

「今、1歳のうまみは元気に大きくなってるよ。心配しないで。」

つづく

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