うまみ(女)の記

連載:先天性の難病を持つムスメ⑤口蓋裂児の授乳と涙の経管栄養(GCU)

うまみ(女)の記
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突然のGCU、そして増殖する「不安」

さて、ある日突然NICUからGCUへとお引越ししていたうまみちゃんですが。

早速GCUへ向かうと、そこには今までのNICUとはガラッと変わった景色が広がっていました。

「・・・・・・・・・・・・。ここ、どこや。」

NICUでは、常にどこかの赤ちゃんのモニターがピーピーと激しく鳴り響き、医師もたくさんいて、看護師さんも慌ただしくしていましたが…。しかもあたり一面、白のみ。そこに色はない。(たまに、お母さんが持ってきた遮光府(寝る時にコットや保育器にかぶせる布)に柄が付いているぐらいだ)

打って変わって、GUCには、オルゴールの穏やかで優しい音楽が流れ、中にはモニターを付けていない子も。
たまにモニターが鳴るが、 それほど大きいものではない。
あたりも、色がある!(看護師さんはピンクの看護服)
そして、医師の姿はない。(何かあった時だけ、呼ばれて駆け付けてくる)
看護師さんたちも、NICUの時より穏やかな表情で、笑顔がたくさん見られる。

そして…うまみを発見!!

うまみはその穏やかな空気の中で、コットの中ですやすやと眠っていた。

「うまみ~・・・・・(涙)」

うまみは、安定しているとはいえ、まだ呼吸状態が良いわけではないので、伏臥位などの姿勢で気道を確保する方法で通常過ごしている。(ポジショニング)
とはいえ、GUCの中ではやはり一番多くモニターが鳴っている
時々チアノーゼが出ることもある…。
本当にGCUに移動して大丈夫なのか、このまま退院したとしたら…この状態のうまみを、私は看護することができるのだろうか…
GCUへ移ったことで、急に「退院」を意識するようになり、その先の見えない看護への不安が湧き出してきた。

口蓋裂専用哺乳瓶での授乳

GUCでは、基本的に自宅へ帰った時に困らないように、赤ちゃんのケア・看護などを学ぶ場でもある。

入浴の仕方や、家で過ごす際の注意事項、あとは個々の赤ちゃんに応じた看護方法を学ぶ。

うまみの場合、ミルクがほとんど口から飲めない状態で、少し飲んでは舌根沈下によりチアノーゼが出る。
直接授乳(直母)も毎日欠かさず練習したが、一向にのめる気配はない。

直母は難しいとの判断により、途中から搾乳した母乳を口蓋裂専用の哺乳瓶に入れ授乳する方法に切り替わった。
しかし、哺乳瓶での授乳中も取り付けられているモニターが、度々鳴り響き、うまみの顔が苦しそうに歪む度、私は無力で、ただただ背中を起こし、さすってやるぐらいしかできなかった。

経鼻経管栄養の練習

うまみは、十分な量の母乳を口から飲むことができなかったので、経管栄養は必須だった。

医師からも

「うまみちゃんは、口から飲む量が少ないので、退院後もしばらく経管栄養での母乳の注入が必要になるでしょう。もちろん、退院までに飲む量が増えることもあるのですが、一応練習をしてもらおうと考えています。」

「え?練習・・・ですか?」

「ええ、経管栄養のチューブを入れてもらう練習です。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

これを…このチューブを鼻から…胃まで…私が!?
え?これって、病院で先生や看護師さんがするものじゃないの?
私…素人なのに…できるわけないじゃん!!!

そう心の中で叫びました…。

「お母さん、チューブは自宅に帰ってからも度々交換することになると思います。
誤って抜けてしまったりすることもあるので、その度に病院へ来るというのも…
経管栄養をご自分でされているお母さんは沢山いますよ。
今から練習すれば、ご自分でできるようになります、 大丈夫ですよ。」

そう言われ、私の経管栄養の練習が始まった。

【経鼻経管栄養】
鼻から胃までチューブを入れ、そこから胃や腸に必要な栄養を直接注入することです。 
誤って気道に挿入してしまうと、注入時に呼吸困難を引き起こすなど、とんでもないことになってしまうので、注意が必要です。※実際医療現場であっても、誤って気道挿入してしまった事例があるそうです。

もし、間違えて気道に挿入してしまったら…

そう思うと、怖くてたまりませんでした。

そして、何度も何度も人形を使って練習し、いざ実際に我が子うまみに挿入する日がやってきました。

「お母さん、私がうまみちゃんを抑えておきますから、落ち着いてやってみてください。」

細いチューブを挿入しようとするが、抑えられた時点で察したのか、うまみは顔を真っ赤にして泣き叫ぶ。

手が・・・・手の震えがおさまらない・・・・。

自分の脈拍がどんどんあがり、周りにも聞こえているんじゃないかと思う程、心臓がバクバクと音を立てる。

ふー・・・・深呼吸をし、いざ。

震える手で、うまみの鼻に挿入しようにも…

「んぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」

暴れながら必死に抵抗するうまみ。
そしてそれを押さえつける看護師さん・・・。

嫌だよね…痛いよね…
こんな小さな体で…こんな小さな鼻の中に、いくら細いとはいえ、チューブを…
しかも、胃の中に届くまで入れるなんて…
躊躇してしまう…。

「お母さんがためらう程、何回もやり直す度、うまみちゃんは苦しむんですよ。
やるときはササっと一気にやってください!」

以前、経管栄養の指導をしてくれた看護師さんに言われた言葉が頭をよぎった…。

そうだ…ためらっても仕方がない…。
これは…私の役目なんだ…。
やらなければならない…うまみのために…。

心を鬼にして、一気に挿管した。

なんと、一発で胃までちゃんと挿管できた!!

よかった…。よかった…。
抜けないようチューブをテープで固定し、すぐさま泣き叫ぶうまみを抱いた。

「ごめんね…ごめんね…痛かったよね…ごめんね…」

緊張の糸が切れ、私はまだ震えが残る手で、ぎゅっとうまみを抱きしめながら泣いた。

こんな身体に産んでごめんなさい…
こんな痛い思いをさせてしまってごめんなさい…

とにかく、うまみに申し訳なくて、涙が止まらなかった。

難病で産まれてきたうまみは、これから先も何度も普通はしなくてもいい「痛み」「苦痛」を経験することになるだろう…。
でも、それは回避することができるわけじゃない。
生きていくために、これからもっと生活しやすくするために、全て必要な事。

わかっているけど、この時ばかりは、それまで冷静に気丈に振舞ってきた私も堪えた…。

こうして、私はGCUに入院中、何度も何度も経管栄養チューブ挿管の練習を行った。
時には、失敗して何度も挿管し直す事もあったし、出血して慌てた事もあったけど、何度も何度もうまみと一緒に頑張ってきた。

一番つらいのは、うまみなのだ。
そう思えば、自然と悲観することは少なくなっていった。(時には落ち込むこともあるが…)
私は悲劇のヒロインなわけではない。
私は、うまみの為に今何ができるか、どうすればもっとうまみが快適に過ごせるかを常に考えて行動してきた。
100点満点ではなかったかもしれないけど、それが私にできる、唯一の役目だと今も思っている。

うまみは1歳を超えた今でも、2週間に1回程度、この経管栄養チューブの入れ替えが必要な状態だけど、今は慣れてきた。(自分で抜いちゃうこともあるので、3回/週位やるときもある…)
でも、うまみが泣き叫ぶのは今も変わらず、それを馬乗りで顔と手を膝で押さえつけながら挿管するのは、やはりつらい。

こうして私の経管栄養チューブ練習が始まったわけだが、この問題の先に、また別の問題が起きることになる。

つづく

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