うまみ(女)の記

連載:先天性の難病を持つムスメ⑥エアウェイ挿入という選択(GCU)

うまみ(女)の記
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気管切開をすすめられる

GCUへ移って2か月程経過した。

なかなか退院できそうにない。
医師からは、

「うまみちゃん、呼吸状態があまりよくないですね…。
現在はポジショニング(気道を確保するため、横を向いて寝ている)の工夫をしたりしているんですが…。
酸素の値も下がることが多くて、まだ自宅での生活は厳しいのではないかと思っています。
そこで、病院として何らかの治療をしないといけないんですよ。
改善するまでずっと入院というわけにもいかないので…。」

うまみは、ひどい時はサチュレーション50切っている時もあったので…。

【サチュレーション】
酸素飽和度を意味する医療用語で、SpO2とも呼ばれていますが、MAX100で通常は100~95の間です。

「はぁ・・・。治療って・・・どういった事をされるのでしょうか?」

「一般的に、うまみちゃんのように呼吸が難しい赤ちゃんの場合、喉に穴をあけて・・・」

「は!?喉に穴!?それって…気管切開ってことですか…?」

私は、うまみが入院中、ずっと同じ病気の子や、同じ症状のある子について調べていた。
だから、気管切開についての知識は少なからず持ち合わせていた。

【気管切開】
肺に空気を送ったり、痰を吸引しやすくするために気管に孔を開けること 。

もしかしたら…とは思っていたが、どうしても、女の子であるうまみの喉にメスを入れることは避けたかった…。

「先生、うまみが呼吸が難しい事、苦しんでいることは十分に理解しているつもりです。
ただ・・・どうしても、気管切開はしたくないんです
気管に穴をあけることは…傷がつくという事ですよね?
どうしてもそれしか手段がないなら、うまみの為に…決断しないといけないとは思っています。」

「・・・・・。」

「私、うまみが入院してからずっと、色々インターネットで調べていたんですが…
中には、気管切開しなくても、エアウェイという器具で回避できている子もいると知りました。
エアウェイについて、私自身詳しくはないのですが…もし、それでうまみに穴を開けなくても済むとしたら…
試してみたいんです。ダメだったら…気管切開も仕方がないと思っています。
やるだけ…考えてもらえませんか?」

医師でも、看護師でもない、一般人に治療に対して口を出され、医師はムッとするかもしれない…
そう思ったが、娘の為ならなんだってやるし、言う。
後で後悔したくないから…どう思われたって、何言われたってかまわない。そう思いました。
すると・・・

「お母さん、エアウェイもご存じだったんですね。
確かに、エアウェイという方法もありますが、エアウェイだと100%呼吸に改善がみられるかはわかりません。
気管切開なら確実に改善できます。
ただ、お母さんの言う通り、気管切開は喉に穴をあけることになるので、少し僕自身も気が引けています…。
うまみちゃんの場合、今のところは緊急を要するレベルではないので…。
・・・・やってみますか?エアウェイ。」

「え!いいんですか!?」

「少し、他の医師とも相談してみますね。できれば穴はあけたくないですよね。女の子ですもんね。」

そう優しく笑った主治医が…天使に見えた瞬間だった。

「ありがとうございます!!ありがとうございます!!!」

私は何度もお礼を言った。

「その代わり、エアウェイは毎日、管理が大変ですよ。」

「いいんです!穴を開けなくて済むなら、頑張ります!」

そう言って私はひとまず、エアウェイを検討してもらえるところまでたどり着いた。

【エアウェイ】
エアウェイは、舌根沈下による気道閉塞が疑われる場合の気道確保や、舌根沈下予防のために用いるものです。種類は口から入れるもの(経口エアウェイ)や、鼻の穴から入れるもの(経鼻エアウェイ)などがあります。
うまみの場合は鼻からの「経鼻エアウェイ」でした。

過酷な経鼻エアウェイ

それから、数日後、主治医から話があった。

「お母さん、うまみちゃんのエアウェイについてなんですが・・・とりあえず、やってみましょう!」

「え!本当ですか!」(心の叫び:やったーーーーやったーーー!!!)

「でも、もし改善が見られないようであれば…」

「わかっています!試せるだけでも、ありがたいです。」

「そうですか。では今度、経鼻エアウェイを入れましょう。
ただ、初めに話しておきますが、うまみちゃんの場合、まだ小さいので鼻の穴のサイズに合うような細い経鼻エアウェイがないんですよ。だから、とりあえずは気管用のチューブを切って、鼻から入れ、気管の手前まで入れて使います。これで気道が確保できるので、改善するといいのですが…。
挿管後は、このエアウェイが詰まらないように、30分~1時間に1回は吸引機で中に詰まった鼻水などの分泌物を吸ってもらいます。」

「え・・・30分~1時間に一回って・・・それ、夜中寝ている時もですか?」

「そうです。でないと、エアウェイは細いので、詰まってしまいます。
それでも詰まれば、一回抜いて、洗浄してからもう一度入れ直すことになります。
細いとはいえ、鼻の穴いっぱいいっぱいの太さなので、経管栄養のチューブよりははるかに太いです。」

「・・・・・・・・・・。」

なんだと?

能天気に浮かれ切っていた私は、そんなことまでは調べれていなかった・・・。
ぬかった・・・・。
しかし・・・それで気管切開しなくてよいのなら・・・そう思い、いざ、経鼻エアウェイを決行した。

いざ、経鼻エアウェイ挿管の日

はじめてエアウェイを挿管する日。

その日、私が冷凍母乳を片手にうまみに面会に行くと・・・
先生がやってきた。

「お母さん、今日うまみちゃんのエアウェイを挿管するんですが、お母さんが帰ってから行うことになりますので、また帰る時に教えてください。」

「え?私・・・居なくていいんですか?」

「・・・・ええ、また看護師から話があると思いますので・・・。」

「・・・?」

どうしたんだろう?なんでだろう?そう思いながら GCUへ行くと、看護師さんがいたので聞いてみると・・・

「あぁ・・・お母さんは見ない方がいいかもしれないと思って・・・。
はじめてのエアウェイは医師でも入れるのが結構大変だから、うまみちゃん今まで以上にかなり泣くと思うんですよね・・・。
お母さん、見たらきっとつらいだろうし・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。」

そういう事か・・・。

「でも・・・うまみが頑張ってるのに・・・。」

「いや、本当に。今まで私もたくさんの赤ちゃん見てきたけど、本当にきついから。見ない方がいいと思うよ・・・」

「・・・・・・・・。」

その後、説得されて、結局その日は見ずに帰ることに・・・。

病院を出て、車に乗ると・・・残してきたうまみが気になり、不安でいっぱいになり、やはり付いていてあげるべきではないか、病院に戻るべきかと葛藤するも、看護師の言葉がよぎりしばらく駐車場から離れられなかった。
涙が出てくる・・・
そんなに看護師さんに言われるってことは、きっと相当痛いのだろう、きっと相当泣くことになるのだろう・・・
そう思えば思う程、迷い、なかなかエンジンをかけることができなかった。

帰り際に、 不安で心配そうな私の顔を見て、先生が

「無事終わったら電話しますから、安心してください。」

そう言ってくれていた。

よし、今日は信じて帰ろう。

無事終わることを祈って、なんとか家へ帰ってきた。

帰ってから電話が来るまで、一人部屋で待ち続けた。
しーんと静まり返る部屋の中で、頭の中はうまみのエアウェイのことでいっぱいになった。
よくない事ばかり考えてしまう。

もし、ちゃんと入らなかったら…「気管切開」の決断をしなくてはならない。

きっと今、うまみは見たこともないぐらい泣いているに違いない。
ものすごく痛い思いをしているだろう・・・
私でも、自分の鼻いっぱいの管を気管まで挿管されたら・・・
考えるだけで・・・、想像を絶する恐怖だった。
それをあんなに小さい赤ちゃんに・・・

ついてあげた方が良かったのか、やはり病院に戻ろうか・・・また葛藤が襲ってきた。
私が付いていたところで、痛みが和らぐわけではないのだけど・・・
むしろ先生もやりにくいかもしれないのだけど・・・

考えれば考えるほど、不安で心配でうまみが可哀そうで・・・

「ごめんね・・・・ごめんね・・・・ごめんね・・・・・」

静まり返った部屋の中で私はただ、あやまりながら、泣き続けて電話を待つしかなかった。

しばらく待っていると、夕方ごろ電話が鳴った。

「!!もしもし!?」

「あ、お母さん。 電話遅くなってすみません。 うまみちゃん、無事エアウェイ挿管できましたよ!」

「本当ですか!?ありがとうございます!!本当にありがとうございます!!」

ほっとして、体中の力が抜けきった。
何度もお礼を言い、電話を切った。

とにもかくにも、なんとか無事エアウェイの挿管を終えたうまみだが、翌日、想像していなかった衝撃の状態になっているうまみを見て私は茫然と立ちすくむのだった・・・。

つづく

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